受賞者:藤原耕二氏(東北大学大学院理学研究科)
受賞業績:幾何学的群論に関する研究業績
1987年にM. Gromovが発表した双曲的群とよばれる離散群の研究により,離散群を幾何学的な研究対象と捉え,幾何学的な手法で代数的な諸結果を導きだす研究が飛躍的に進展し,「幾何学的群論」とよばれる研究分野が誕生しました.
藤原耕二氏の研究はこの流れの中心をなすもので,例えばM. Bestvinaとの共同研究において,弱固有不連続という群作用の条件を定式化するとともに,局所コンパクトとは限らない双曲空間に弱固有不連続に作用する群に対して擬準同型が豊富に存在することを示し,とくにこれらの群の2次の有界コホモロジー群が無限次元となることを証明されました.
さらにこの結果の応用として,いまだに未知な側面が多い閉曲面の写像類群について,これらの群は階数の高い格子を含まないというFarb-Kaimanovich-Masurの剛性定理の別証明をあたえ,有界コホモロジーの研究と写像類群の研究の双方に大きく寄与されました.
素朴に定義される群を,独自の視点で種々の幾何学的アイディアを絡めて解析してきた藤原氏の研究は,幾何学的群論における有界コホモロジーの研究において重要なマイルストーンとなるものであります.
このような藤原氏の幾何学的群論における一連の研究は,さらに新たな展開を期待させるものであり,幾何学賞に相応しい業績として高く評価されました.