● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 入江 博 (茨城大学大学院理工学研究科 准教授)
     柴田将敬 (名城大学理工学部 准教授)

授賞題目: 3次元対称凸体の Mahler 予想の解決

授賞理由: $n$次元ユークリッド空間内の原点対称で内点をもつ有界な凸体 $K$ とその極凸体の体積の積 $\wp\left(K\right)$ を $K$ の volume product と呼ぶ。 K. Mahler は、Minkowski の「数の幾何」に関連する研究で $\wp\left(K\right)$ の下からの評価を与え、その最小値は$4n/n!$ となると予想した。 $n=2$ の時 (Mahler) や、$K$ に条件を付けた時などに証明されていた。 また、予想より弱い評価も得られていた。 入江氏と柴田氏は、2020 年に Duke Mathematical Journal に出版された論文 "Symmetric Mahler’s conjecture for the volume product in the three dimensional case" において、3次元の場合の Mahler 予想を解決した。 この予想は専門家の間でも難攻不落と思われていて、入江氏と柴田氏が3次元 Mahler 予想を解決したことは驚きを持って受け止められた。 用いた議論がそのまま一般次元に拡張できる訳ではないが、それまで手が出ないと思われていた難問に対する心理的な障壁が低くなったという点でも、 breakthrough と専門家に受け止められている。 対称でない凸体に対する類似の予想へも取り組み成果を挙げている入江氏と柴田氏の業績は、2022年度幾何学賞に誠に相応しいものである。


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