● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 河野俊丈氏(東京大学大学院数理科学研究科教授)

受賞業績: 幾何学的量子表現に関する一連の研究

受賞理由: 河野氏の幾何学的量子表現に関する一連の研究の中でも,特にKZ方程式の研究において,彼は配置空間の基本群であるブレイド群からのモノドロミーが量子群で記述できることを発見し,その表現からノットの量子不変量を導くという,その後の様々な研究の先駆けをなす目覚ましい仕事をされました. 彼はこれをさらに発展させて,一般種数のリーマン面のモジュライ空間上の射影的平坦なベクトル束のホロノミーの量子群による具体的記述も与えましたが,この結果はKonsevichにより提唱されたTopological Quantum Field Theoryの枠組みの最初の重要な仕事ともなっています.

業績説明

 河野氏は幾何学的量子表現の分野で世界をリードする数々の研究業績を挙げられ,その発展に重要な貢献を果たしてこられました. 特にKZ方程式の研究において,当時は未だ量子群の概念が生まれたばかりの時期であったにもかかわらず,彼は配置空間の基本群であるブレイド群からのモノドロミーが量子群で記述できることを発見し.さらにその表現からノットの量子不変量を最初に導き出しました. これらは,その後生まれた種々の研究の先駆けとなり,1990年にDrinfeldはKZ方程式のモノドロミーとuniversal R-matrixとの関係を確立しましたが,微分方程式の解析を通じて最初にその事実を見出した河野氏の先見性は高く評価されます.

 河野氏はこれらの仕事をさらに発展させて,一般種数のリーマン面のモジュライ空間上の射影的平坦なベクトル束のホロノミーの量子群による具体的記述を与え,Wittenがpath-integralによりheuristicに与えていた3次元多様体の不変量にヘーガード分解や写像類群を用いた基礎付けを与えました. この結果は,これより少し前にKontsevichにより提唱されたTopological Quantum Field Theoryの枠組みの最初の重要な仕事ともなっています.


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