● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 村上 順(早稲田大学理工学術院基幹理工学部 教授)

授賞題目: 結び目と3次元多様体の量子的位相不変量に関する一連の研究

村上氏は、結び目や3次元多様体の量子位相不変量の研究で数々の重要な研究成果を挙げられている。 絡み目の多項式不変量の並行化版の研究や Kauffman 多項式に対して Jones 多項式の Iwahori-Hecke 代数に相当する代数 (Birman-Murakami-Wenzl 代数) を Birman-Wenzl と独立に構成したことなどに始まり、Thang Tu Quoc Le 氏と共同で Kontsevich 積分を研究し、Kontsevich 不変量を枠付きタングルの不変量に拡張するなど多くの重要な成果を得ている。 Le 氏との共同研究の流れと大槻知忠氏の研究の流れが合わさることでなされた3次元多様体の普遍的な有限型量子位相不変量 (LMO 不変量) の構成はこの分野の金字塔である。 村上斉氏との共同研究で Rinat Kashaev 氏の不変量が色付き Jones 多項式の 1 の冪根における値と等しいことを示し、Kashaev の予想の再定式化 (体積予想) をしたこともよく知られている。

また、八野正和氏や Alexander Kolpakov 氏との双曲多面体の体積に関する共同研究や、Francesco Costantino 氏との量子 6j 記号と双曲体積の共同研究、Jinseok Cho 氏との複素 Chern-Simons 汎関数の臨界点と双曲性方程式との関係に関する共同研究、Qingtao Chen 氏との共同研究で 1 の冪根での量子 6j 記号の漸近挙動を調べ、Kashaev の体積予想との関連をつけたことなど多くの重要な結果を得ている。 また、永友清和氏との共同研究や最近の Marco De Renzl 氏との共同研究では、非半単純な量子位相不変量の族を構成している。 この研究は、対数的共形場理論やそれに関わる表現論に深く関わりを持つ重要な一歩であると評価されている。

以上のように、村上順氏の量子位相不変量に関する研究は高く評価されており、2021年度幾何学賞に誠に相応しい。


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