● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 作間 誠(広島大学大学院理学研究科 教授)

受賞業績: 結び目理論と双曲幾何学に関する一連の研究

作間誠氏は, 1979年に最初の論文を発表して以来, 結び目や3次元多様体の対称性, 結び目解消トンネル, 1点穴あきトーラス擬フックス群, 2橋結び目の補空間の双曲幾何に関する研究で この分野に大きな影響を与えている.

初期の頃では, 任意の3次元多様体はある曲面束により2重分岐被覆されるという明快な主張が有名である. 1996年に森元,横田と共同でトンネル数が連結和に関して加法的ではなく1+1=3となる例を提示したが, この結果は結び目理論の専門家に大きな驚きを与えたと同時に, 量子不変量の古典的結び目理論への初めての応用として高く評価されている.

その後同氏の興味はJørgensenによりアウトラインが示されていた1点穴あきトーラス擬フックス群の構成に向かった. Jørgensenの理論の正当化は, 秋吉・山下・和田との共同研究により2007年に252ページに登るシュプリンガーのレクチャーノートとして結実し, 現在ではこの分野の基本的文献になっている.

さらに, 同氏は2011年に始まるLeeとの共同研究で, 2橋結び目の4点穴あきConway球面上の閉曲線がいつ補空間上で縮退するかを完全に決定し, その直接の応用として, 2橋結び目の補空間の基本群の間の全射準同型はReily・大槻との共同研究で構成された例で尽きることを示した. 続いて, 2014年に発表した総計90ページからなる3編の論文では, 同様の設定で2本の閉曲線がいつ補空間上でホモトピックであるかを完全に決定し, それを用い, 双曲曲面に対するMcShaneの等式の類似を真に3次元版である2橋結び目の補空間の双曲構造に対して示した.

以上のように, 作間誠氏は地に足のついた手法で結び目理論と3次元双曲幾何学において多くの研究者を巻き込み種々の重要な成果を上げ, この分野の世界的な先導者の一人として大きく貢献している.


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