● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 本多 正平(東北大学大学院理学研究科 准教授)

受賞業績: リーマン多様体の収束の幾何解析的研究

本多正平氏は, リッチ曲率が下に有界なリーマン多様体の極限空間の幾何解析で多くの優れた業績をあげている.

リーマン多様体の極限空間の研究はGromovに始まるが, リッチ曲率が下に有界な場合の研究は2000年頃までのCheeger-Coldingらの弱い意味での1階微分構造を導入した研究の後, 少し間をおいて近年著しく再発展している. この分野で同氏は, 角度の概念を通して2階微分構造を導入し, Cheeger-Colding理論の精密化を進め, 今日の極限空間上の幾何解析の飛躍的発展に深く貢献する若手の一人として, 広く世界から認知されている. 顕著な業績として, ラプラシアンの固有値の収束の別証明や一般化, さらに p-ラプラシアンの第一固有値の, 空間だけでなく p を動かしたときの収束を斬新な統一的視点で示した成果がある.

また同氏は, 深く関連する曲率次元条件を満たす測度距離空間の研究においても顕著な業績を上げている. 崩壊しない極限空間の場合に同氏が導入したリッチ曲率とGigliがリーマン的曲率次元条件の枠組みで導入したリッチ曲率が一致すること, またAmbrosio氏と共同で, リーマン的曲率条件を満たす測度距離空間の列についてのヘッシアンの収束, 熱核の短時間漸近挙動とWeylの法則, リーマン的とは限らない曲率次元条件を満たす測度距離空間の収束列についての非線形なラプラシアンのスペクトルの収束, などを一連の論文として発表し研究の幅を大きく広げている.

以上のように本多正平氏は, 優れた着想と幾何学・解析学についての深い知識および類い稀な実行力を持って, 極限空間の幾何解析的研究の推進に多大な貢献をしている.


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