● 幾何学賞受賞者の業績

受賞者: 高山 茂晴(東京大学大学院数理科学研究科 教授)

受賞業績: 一般型代数多様体の多重標準写像の双有理性に関する代数幾何的研究

受賞理由: 高山茂晴氏は複素幾何学, 代数幾何学の分野において数々の卓越した業績をあげている. 一般型代数多様体の m-重標準写像は, 次数 m を十分大きくすれば, 像への双有理写像となる. 高山氏は一般型代数多様体の m-重標準写像に関して, 次元 d のみによる普遍的な定数 c(d) 以上の次数 m について, 一般型代数多様体の m-重標準写像は双有理写像になることを証明した.

この定理は一般型複素射影代数多様体の族のある種の有界性を示しており, 双有理幾何において基本的な重要性を持っている. この定理が証明される以前には, リーマン面ではこの普遍的な定数について c(1) = 3 であることが古典的に知られていた. 複素曲面では Bombieri により c(2) = 5 であることが証明されており, これらの結果の高次元化は長らく懸念の未解決問題であった. 高山氏は乗数イデアル層を使って正則微分形式を部分多様体から全空間に拡張するという手法を拡張し, 多様体の次元に関する帰納法を適用することにより, 高次元化を一気に成し遂げた. 高山氏のこの結果は複素幾何, 代数幾何におけるブレークスルーとして今日たいへん広くその重要性が認知されている.

辻元氏は1999年にこの定理を発表した. その証明は解析的であり, 独創的な優れた構想に基づいていたが, 不明瞭な部分があった. 高山氏と Hacon-McKernan は辻氏のアプローチに正面から取り組み, それぞれ独立に代数幾何的な証明を与え, この問題に決着をつけた. 彼らの論文はともに2006年に出版され, そして辻氏の解析的な証明を載せた論文が2007年に出版された. 高山氏の論文は明快であり, その論文の手法はさらに多くの応用と興味深い未解決問題を与えている.


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